この記事を読んでいるあなたは、
- カバード・コール戦略ってなに?
- カバード・コール戦略の何がいいの?
- カバード・コール戦略のやり方は?
上記のように考えているかもしれません。
今回は、そんなあなたに向けて「カバード・コール戦略とは何かやそのやり方」などをわかりやすくお伝えしていきます。
オプション取引の戦略は複雑なギリシャ指標が読めないと理解できないものが多いですが、ここでは比較的わかりやすいオプション戦略であるカバード・コールを解説します。
カバード・コール戦略とは
カバード・コール戦略とは、原資産(株など)を保有しつつ、コールオプションを売る戦略のことです。
保有する原資産について、権利行使価格以上の値上がり益を放棄する対価としてプレミアムを受け取ることができます。
つまり、将来の不確実な値上がり益を放棄する代わりに確実なプレミアムの獲得を目指す戦略です。
カバード・コール戦略が有効な状況
カバード・コール戦略が有効な状況は、
- 原資産の価格があまり変動しないと予想される場合
- 株価の若干の下落が予想される場合
以上の2つです。
株価が大幅に上昇してしまうと現物取引でなら本来得られたはずの値上がり益が享受できず、反対に大幅に下落しまっても原資産の損が生じます。そのため、これらの状況ではカバード・コール戦略は効力を発揮できません。
株価が変動しないときにこそ「将来の不確実な値上がり益を放棄する代わりに確実なプレミアムの獲得を目指す」という戦略の要の価値が発揮されます。
次のカバード・コール戦略の損益例で実際の数字を見ながら確認していただくとわかりやすいと思います。
カバードコールの損益例
カバード・コール戦略の損益例を紹介します。
・A社株を1000円で1株買付して保有
・A社株をコールの売り(権利行使価格1050円、プレミアム20円、満期1ヶ月後)
<ケース1>A社株が少し上昇(権利行使価格を下回る)
1ヶ月後の株価:1030円
株価の上昇下落:+30円
プレミアム収入:+20円
ーーーーーーーーーーーーーー
損益の合計 +50円
権利行使価格を下回る上昇の場合、「原資産の値上がり益」と「プレミアム」の両方を得ることができます。
<ケース2>A社株が上昇(権利行使価格より上回る)
1ヶ月後の株価:1100円
株価の上昇下落:+100円
プレミアム収入:+20円
値上がりの放棄:−50円
ーーーーーーーーーーーーーー
損益の合計 +70円
権利行使価格を上回る上昇の場合、「原資産の値上がり益」と「プレミアム」を得られる反面、権利行使価格以上の値上がり益は放棄しなければならなりません。
<ケース3>A社株が下落(現在の株価より下回る)
1ヶ月後の株価:950円
株価の上昇下落:−50円
プレミアム収入:+20円
ーーーーーーーーーーーーーー
損益の合計 −30円
現在の株価1000円を下回る場合、「プレミアム」を得られる反面、原資産の下落損が発生します。ただ、プレミアムによって原資産の下落損を軽減することが可能。
カバード・コール戦略のメリット
プレミアムを受け取ることができる
満期日の株価が設定時の株価を上回った場合、原資産の値上がり益とコールを売り立てたことによるオプションプレミアムの両方を受け取ることができます。
ただし、この時に権利行使価格の株価を上回っていた場合は、本来得られたはずの値上がり益は放棄しなければなりません。
下落時の損失をオプションプレミアムで軽減できる
株価が下落した場合、現物取引であれば下落分の損失が生じてしまいますが、カバード・コール戦略ではオプションプレミアムが貰えるため損失は軽減されます。
また、原資産保有期間に配当期日を迎える場合は配当も受け取ることができ、受け取った配当でも損失軽減ができます。
「不安定なとき」や「ボラティリティが高いとき」に強い
カバード・コール戦略は、上昇一辺倒の時期よりも市場が不安定な時期や方向感に乏しい時期に効力を発揮します。
現物取引では、市場の方向感が定まっていない時期は、値上がり益が得られないためあまり歓迎されません。
しかし、カバード・コール戦略では株価の上昇がなくともオプションプレミアムから利益を上げることが可能ですので不安定な時期がむしろ有利に働きます。
また、不安定な時期にはボラティリティ(価格変動性)が高まりやすく、ボラティリティが高まればオプションプレミアムも上昇しやすくなります。
カバード・コール戦略の注意点とデメリット
原資産の(一定以上の)価格上昇による利益が得られない
カバード・コール戦略では、権利行使価格以上に株価が上昇しても、それ以上の上昇の恩恵は受けることができません。そのため、市場が上昇一辺倒の時期では不利になります。
このように、株価が大幅に上昇するような局面にはカバード・コール戦略は向いていません。株価の上昇が予想されるときは、現物保有やコールの買い建てを行うのが適切でしょう。
カバード・コール戦略は危険?リスクは?
カバード・コール戦略は、運用方法を理解すれば危険ではありません。
通常、「オプションの売り」は原資産の上昇による損失が無限大であるため危険とされていますが、カバード・コール戦略ではコールオプションの売りと共に原資産を保有するため、原資産価格が大幅に上昇してしまった場合でも決済できるという利点があります。
moomoo証券やe-trade証券会社など米国の証券会社では、カバード・コール戦略が一番リスクが低く難易度も低い戦略として紹介されています。
一番難易度が低いと紹介されているのには理由があります。
カバード・コール戦略では、リスクが増えることはなく、むしろリスクを抑え込むことが可能だからです。
リスクとは、一般的には”危険性の高さ”という意味で使われていますが、本来は「価格変動性」のことを指します。
リスクが高い→価格変動性が大きい
リスクが低い→価格変動性が低い
では、カバード・コール戦略を実行したときのリスクについて考えてみます。
- 株価が権利行使価格を超える→値上がり益を放棄し、プレミアムを得る
- 当初株価以上権利行使価格未満→株の利益+プレミアム
- 株価の変動なし→プレミアムを得る
- 株価が下落→下落による損失、プレミアムを得る
このように、どのパターンでもオプションプレミアムが得られるため、結果的にリスクを抑え込めています。
カバード・コール戦略の始め方|おすすめの証券会社
自分自身でカバード・コール戦略を組み立てる場合、オプション取引ができる証券会社で取引する必要があります。
そこで、日経225オプションと米国株オプションでカバード・コール戦略を始める場合の2パターンでのおすすめの証券会社を紹介します。
日経225オプションの場合
日経225オプションでカバード・コールを行う場合は、マネックス証券がおすすめです。
日経225オプションを取り扱っている証券会社には、それぞれメリット・デメリットがあるので、詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
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米国株オプションの場合
日本では、個別株のオプションがほとんど取引されていないため、個別株でカバードコール戦略をしてみたい方には米国株オプションをおすすめします。
米国株オプションは、日本では「ウィブル証券」「サクソバンク証券」「IB証券」の3社のみです。
取引画面が見やすく手数料も安いので初心者におすすめはウィブル証券です。
ウィブル証券については、こちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
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カバード・コール戦略の組み立て方
カバード・コールの始め方は2つあります。1つは自分自身でカバード・コール戦略を組み立てる方法です。そして、もう1つはカバード・コール戦略を用いた運用を行っているETFを購入する方法です。
まずは、カバードコール戦略を自分自身で組み立てる方法を解説します。
<ステップ1>
- 原資産を保有する
- 利食いしていいと思える権利行使価格で原資産のコールオプションを売り建てる
<ステップ2>
- 原資産を売却し義務を履行する(オプションプレミアムを得る)
おすすめのカバード・コールETF
自分自身でカバード・コール戦略を行うのはハードルが高いと感じる方は、カバード・コール戦略のETFを買うのがおすすめです。
ETFを買うだけならオプションのポジションを持つ必要がないので誰でも気軽にできます。
以下では、おすすめのカバード・コールETFを紹介します。
カバード・コールETFは、現物株の取引ができる証券会社であれば基本的にどこでも購入可能です。
日本のカバード・コールETF
日経225 カバード・コール ETF(プレミアム再投資型)
日経225 カバード・コール ETFは、日経225を原資産とするカバード・コール戦略を行っているETFです。運用会社はグローバルX社。
4月と10月の年2回分配を出していますが、プレミアムは再投資される仕組みになっています。
2022年7月の設定来から順調に基準価格が上昇しており、設定来から約30%上昇のパフォーマンスとなっています。
米国のカバード・コールETF
XYLD(S&P500・カバード・コール・ETF)
S&P500・カバード・コール・ETFは、S&P500指数の株式でカバードコール戦略を行っているETFです。運用会社はグローバルX社。
XYLDは毎月分配は行っており、直近配当利回りは約9%と非常に高く魅力的なETFと言えるでしょう。
ただ、基準価格は横ばい又は下落傾向にあり、タコ足配当気味のETFであることには注意が必要です。
XYLDは日本国内でも上場(銘柄コード:2868)。国内上場はしていますが、為替ヘッジは行なっていないため、為替変動の影響を受けます。
QYLD(NASDAQ100・カバード・コール ETF)
NASDAQ100・カバード・コール・ETFは、NASDAQ100指数の株式でカバードコール戦略を行っているETFです。運用会社はグローバルX社。
XYLDと同じく毎月分配を行っており、直近配当利回りは約12%です。
QYLDは日本国内でも上場(銘柄コード:2865)。こちらも同じく為替ヘッジは行っていません。
運用会社のグローバルX社がより詳しくQYLDについて動画で解説しています。
IGLD(FT Vest ゴールド戦略 ターゲットインカムETF)
ゴールド戦略 ターゲットインカム・ETFは、S&P500指数の株式でカバード・コール戦略を行っているETFです。
これらのETFは、マネックス証券で取扱いがあります。
まとめ
今回はカバード・コール戦略についてできるだけ簡単に解説しました。
オプション取引の中ではとっつきやすく初心者でも始めやすいオプション戦略ですのでぜひ活用してみてください。
この記事が参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。